父が亡くなって初めて迎えるお盆。何をどうすればいいのか分からず、私は母に尋ねました。すると母は、仏壇の前で手を合わせながら、静かにこう言いました。
「形も大事やけど、気持ちがいちばんやで」と。
奈良県平群町では、今も昔ながらの風習が大切にされています。
初盆には、精霊棚(しょうりょうだな)を飾り、故人の好きだった食べ物や季節の果物を供えます。迎え火と送り火を焚いて、ご先祖さまをお迎えし、お見送りします。母は、庭先で小さな火を焚きながら「この火を目印に、帰ってきはるんやで」と教えてくれました。その言葉に、私は思わず胸が熱くなりました。
母が大切にしていたのは、形式よりも「想う心」でした。
「お供えは高いもんやなくてええ。あの人が好きやったもんを、心込めて並べたらええんや」そう言って、母は父の好きだったすいかと、手作りの煮物を用意していました。お盆は、亡くなった人と“心で会う”時間。母の姿から、私はそれを学びました。
【初盆の準備】これだけは押さえておきたい
初盆の準備で、特に大切なポイントをいくつかご紹介します:
• 精霊棚の準備:白い布を敷き、故人の写真や位牌を中心に飾ります。
• お供え物:故人の好物、季節の果物、そうめんやおはぎなど。
• 迎え火・送り火:玄関先や庭で、素焼きの皿におがらを焚く。
• 提灯の用意:初盆には白提灯を飾るのが一般的です。
• 親族やご近所への挨拶:感謝の気持ちを伝える場としても大切です。
地域によって細かな違いはありますが、平群町では「心を込めて迎える」ことが何より大切にされています。
想いをつなぐ、初盆という時間は、故人ともう一度つながる時間。
そして、親から子へ、家族の想いを受け継ぐ時間でもあります。
母が教えてくれた“心遣い”を、今度は私が子どもたちに伝えていけたら・・・そんなふうに思いながら、今年もお盆を迎えます。